福島第一原発では、汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が1000基余りのタンクに保管されていて、東京電力は、政府の方針に従い、去年8月24日から基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めました。
先月までに7回の放出を完了し、現在は、25日までの計画で8回目の放出が行われていて、これを終えると、累計の放出量はおよそ6万2500トンになる見込みです。
放出されたトリチウムの総量はおよそ8.6兆ベクレルで、年間の最大値として設定している22兆ベクレルを下回りました。
東京電力や国などは、原発周辺で海水を採取しトリチウムの濃度を分析していて、これまでに検出された最大値は1リットルあたり29ベクレルと、東京電力が自主的に放出の停止を判断する基準の700ベクレルや、WHO=世界保健機関が定める飲料水の基準1万ベクレルを大きく下回っています。
こうした状況について、安全性の検証を続けているIAEA=国際原子力機関は、先月18日に公表した放出開始後2回目の報告書で、引き続き国際的な安全基準に合致しているという評価を示しています。
一方で、福島第一原発の廃炉作業では去年秋以降、作業員が放射性物質を含む廃液を浴びるなどトラブルが相次いでいて、22日には事故後初めてとなる溶け落ちた核燃料デブリの試験的取り出しが、装置の取り付けミスで延期されるなど、東京電力の管理体制が問われる状況が続いています。
福島県漁連の野崎哲会長は22日、東京電力に対し「1度放出を始めて慣れたと言える事業ではなく、1回1回緊張感を持ってやってほしい」と求めていて、放出が2年目に入る中、安全管理への懸念を払拭(ふっしょく)することが課題となります。