2016年、名古屋市で暴行の罪に問われ、のちの刑事裁判で無罪が確定した男性は、警察が捜査の過程で集めた指紋やDNA型、それに顔写真のデータについて「プライバシーの侵害だ」として国にデータを抹消するよう求める裁判を起こしました。
先月30日、2審の名古屋高等裁判所は「無罪が確定した以上、原則としてデータの抹消が認められるべきで、男性のデータが本人の意思に反して捜査機関に保管されていることは憲法に違反する」として、1審に続いて、警察が保管する指紋やDNA型などのデータを抹消するよう国に命じました。
13日が上告の期限となっていましたが、警察庁の露木長官は12日の記者会見で「指紋などの記録を抹消するという結論については警察庁としても争う理由がないと判断した」として、上告しない考えを明らかにしました。
露木長官は警察ではこれまでも国家公安委員会が定める規則や警察庁の通達などに従って、無罪となった容疑者などのデータを抹消する運用を行ってきたとしたうえで、「今回、判決で示された事実関係を受けて、指紋の記録などを抹消する判断に至ったことについては今後の教訓としたい」と述べました。
一方、判決の中で、指紋やDNA型のデータの保管について「法整備が行われることが強く望まれる」とされたことについては、「ほかに相当数の裁判例があり、裁判所の考え方も分かれている。今回の判決で直ちに立法措置が必要になるとは考えていない」と話しました。