初日の16日は、愛知県から訪れた15人が、「のと鉄道」の中で最も北にある穴水駅から特別列車に乗りました。
語り部をつとめたのは、元日に起きた地震の際、観光列車から乗客を誘導して避難した乗務員の宮下左文さんで、当時、激しい揺れに襲われた能登中島駅に近づくと、大津波警報も出たため、40人余りの乗客を必死で高台へ誘導して、そのまま一夜を明かしたことを説明しました。
宮下さんは輪島市にある自宅が壊れ、仮設住宅で暮らしていることを説明したうえで、ことし3月に駅で出会った地元の女性の話を紹介しました。
女性は「周り中の家が倒壊して行くところがないので駅でたたずんでいる」と話したということで、宮下さんは「返すことばがありませんでした」と述べていました。
列車が終点の和倉温泉駅にさしかかり、宮下さんが「また来て※くだいね」と地元の方言であいさつすると、乗客から大きな拍手が送られていました。
乗車した愛知県の68歳の男性は「どれも心に響いて、身近で大地震が起きたらどうしたらいいのか考えさせられました。南海トラフの巨大地震も心配なので、備えを考えます」と話していました。
宮下さんは「真剣な表情で聞いてくれたので思わず涙を流してしまいました。自分のことばで経験を伝えられたと思います。これからも震災の経験や現状を伝え続けていきます」と話していました。
「のと鉄道」は今後、団体や旅行会社からの予約を受けて「語り部列車」を運行することにしています。
※「くだいね」は「くださいね」という意味の方言。